BCAAの理想的な比率は?
- 2018.08.14
- サプリメント

BCAAのサプリメントは、広く普及していますが、新しい製品も年々登場しています。近年はロイシンを増量し、バリン、ロイシン、イソロイシンの比率を1:4:1にしたロイシンリッチプロテインやそれ以上にロイシンを増やした製品が登場しています。
なかには、ロイシンだけ摂ればよいと言っているサイトもあるくらいです。でもそれはもっとも効率的で、アスリートにとって真実なのでしょうか? バリンやイソロイシンは私たちにとって軽視してもよい存在なのでしょうか?
今回はBCAAの理想的な比率とそれぞれの役割について、調べてみました。
1.BCAAとは
必須アミノ酸のうちの3種類、バリン・ロイシン・イソロイシンのことを言います。その構造から分岐鎖アミノ酸と言われ、英語での頭文字からBCAAと言われます。
必須アミノ酸は、ヒトのカラダにとって不可欠で、食事など体外から摂取する必要があります。タンパク質に多く含まれますが米や麦にも含まれるので必ずしもサプリメントから摂取しなければならないわけではありません。
【BCAAが豊富な食品群】
食品名 | 一食の分量(g) | カロリー(kcal) | BCAA(mg) |
玄米 | 150 | 248 | 1,890 |
精白米 | 150 | 252 | 1,635 |
かつお | 100 | 114 | 4,000 |
まぐろ | 100 | 106 | 4,100 |
さけ(生) | 100 | 133 | 3,900 |
鶏ムネ肉(皮なし) | 100 | 108 | 4,300 |
豚肉 | 100 | 216 | 3,800 |
鶏卵 | 50 | 76 | 1,190 |
牛乳 | 200 | 134 | 1,360 |
豆乳 | 200 | 92 | 1,260 |
2.BCAAの役割とは
BCAAは、筋肉線維によって直接、すみやかに燃料源として使用されます。トレーニング前にBCAAを十分に補給しておき、トレーニング中も摂取していただきたい理由はこのことなのです。特にウエイトトレーニングなどの激しい運動中に当てはまります。また、運動前にBCAAを補給すると筋肉の持久力が増し、疲労を鈍らせることが数多くの研究によって確認されています。トレーニング後も疲労を軽減させ、筋合成を促進するためにBCAAを補給した方がいいのです。
3つのBCAAにはそれぞれ役割があります。
2−1.筋成長を促進するロイシン
BCAAのメリットとして、最も注目されているのは成長を促進する能力があるということです。 3つのうち、特にロイシンは筋肉成長に大きく関わっています。
例えていうならエンジンの発火のための鍵というような役割です。この場合のエンジンは筋肉細胞または筋繊維のことです。発火は、成長を促進するための筋肉タンパク質合成のプロセスといえます。そこにスイッチを入れるのがロイシンなのです。
ロイシンはこのプロセスを活性化し、筋肉タンパク質の合成を加速させ、筋肉の成長を促進します。これゆえに近年はロイシンの比率を高めた製品が登場しているのです。
2−2.糖代謝と脂肪燃焼を進めるイソロイシン
イソロイシンはエネルギー源として取り込んだ糖やタンパク質を血糖値を上昇させることなく、骨格筋への血中グルコースの取り込み促進、肝臓での糖新生の抑制、グルコースの酸化的利用の促進をさせる機能があることがわかっています。(参照:経腸栄養におけるL-イソロイシンの血糖値および ヘモグロビンA1cの上昇に対する抑制効果*)
また、体内の脂肪を効率的に燃やしてエネルギーとするには、イソロイシンが不可欠です。国内の他の研究では高脂肪食を摂取している間、イソロイシンを与えられたマウスは、食事中にイソロイシンサプリメントを与えなかったマウスよりも有意に脂肪が少なくなったことを発見しました。 これは、イソロイシンがPPARとして知られている特別な受容体を活性化して脂肪燃焼を増加させ、脂肪貯蔵を阻害するためと考えられます。イソロイシンは脂肪を蓄える機会を減らし、脂肪を燃焼させる能力が向上させるのです。
2−3.トレーニング中の疲労を減らすバリン
BCAAにはトレーニング中の疲労を軽減する働きがあります。これはバリンが体内で果たす役割に伴っているのです。
運動中、トリプトファンは脳によって大量に取り込まれます。トリプトファンは脳内で5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)に変換されるか、セロトニンの分泌に関わっていると考えられます。運動中にセロトニン値が高くなると、脳は身体の疲労サインを感じます。これは、筋力と持久力の低下につながるのです。
ここでバリンがあると、トリプトファンと脳内に入るためのレースを行い、多くはバリンが勝利し脳に取り込まれるのです。トレーニング前とトレーニング中にバリンを服用すると、トリプトファンが脳に入りにくくなり、トリプトファンがセロトニンに変換されなくなるため、筋肉がより疲れずに長時間はたらくことができるようになるのです。トレーニングや試合において、セット間ですばやく回復することができ、トレーニングの後半部分でより強さと持久力を維持することができるようになるのです。
3.理想的比率はやはり1:2:1である理由
僕は、バリン:ロイシン:イソロイシンの比率が1:2:1の製品をお勧めします。 しかし、近年のブームでは、ロイシンの方がずっと高い比率のものが多く、新黄金比として1:4:1のものが主流になりつつあり、1:8:1や、1:10:1のものまで登場してきました。
そのようなロイシン10倍の製品を作っているメーカーでは、ロイシンの重要な役割である「筋肉成長」について、1:2:1の製品より5倍優れているように宣伝しています。しかし、それにはやはり疑問が生じるのです。
BCAAを取るための最も重要なタイミングは、ワークアウトの前、中、後です。このうちどれがベストかは難しいものです。BCAAの役割はこれら全てのタイミングに関わっているからです。
ベイラー大学の科学者らは、大学生の男性グループに足の筋トレを行わせ、ロイシンだけサプリメント、1:2:1の BCAA総合サプリメント、プラセボ(偽薬)を与えました。彼らは、ロイシンが運動後の筋肉タンパク質合成をプラセボよりも向上させたが、総合サプリメントはロイシンおよびプラセボよりも優れたタンパク質合成を増加させることを発見したのです。それはBCAAサプリメントに関しては、1:2:1の比率またはそれに近いものを勧める理由の1つになるのです。(参照:The effects of oral BCAAs and leucine supplementation combined with an acute lower-body resistance exercise on mTOR and 4E-BP1 activation in humans: preliminary findings)
4.トレーニングで求められるのは筋合成だけではない
1:2:1の比を持つBCAA製品を使用するもう一つの理由は、エネルギーと疲労です。前述したように、イソロイシンは糖代謝と脂肪燃焼を促進し、バリンは疲労を減らす効果があるのです。トレーニング中にはこの2つの要素も重要であることは、経験者ならお分りいただけると思います。
1:2:1以上の大きな比を持つBCAAサプリメントを使用すると、バランスよく、エネルギー代謝、脂肪の燃焼、および筋肉の成長のために働くことができなくなります。何ごとも「ちょうどよい」バランスが大事で、何かだけを極端に特化して得ることはかえって効果を損なう恐れがあります。
事実、卵や鶏胸肉などアミノ酸スコアの高い食品は、1:2:1の比率に近くなっています。生物の進化と成長の過程においてもっともナチュラルで効率的でカラダに負担のない黄金比が導き出されたと思うのです。
いくつかの高比重BCAA製品は、バリンおよびイソロイシンを500mg以下しか含有していません。 それではエネルギー補給と、エクササイズ中の疲労軽減と、脂肪燃焼を最大限にするのには不十分であり、筋肉タンパク質合成を最大化し筋肉成長を最大限にするには不十分な印象があるのです。
5.効果的な補給方法
ワークアウトの強度が高かったり、試合などの場合は、その前、中、後でmTOR活性化を最適化し、筋肉タンパク質合成を最大化するために必要な量を補給したいものです。それにはまず2〜3000mgのロイシンを確実に摂取するようにします。そこからバリンとイソロイシンもそれぞれ1,000~1,500mgが必要であることがわかります。
そんなに?と思うかもしれません。しかし成人男性でトレーニングをする方の場合、1日に必要なタンパク質量は80〜120gです(体重と運動量によります)。そのうち12〜15gをBCAAサプリメントで摂るようにするだけということなのです。
鶏肉やサケを100g食べても同程度のBCAAは補給できます。しかし消化に時間がかかるので、ワークアウト周辺のタイミングでは難しいでしょう。粉末のサプリメントであれば数秒で飲むことができ、吸収も速いのです。
6.まとめ
BCAAの黄金比について考察しました。時代とともにどんどん新しい考え方が出てきて、それには一理あるように思えますが、地球に生命が誕生してから長い時間をかけて現在までたどり着いた結論にかなうものはなかなかないと思います。
本文中でも書きましたが、何かだけを極端に摂取することはかえって非効率で健康を損なう気がします。トレーニングもよっぽど極端なボディビルダー以外は、ウエイトもレジスタンスも体幹もバランスよく行い、休息も得ることが一番理想的であると同様なように…。
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